目次
マンションの売却時に支払う税金

マンションを売却する際には他にも様々な税金がかかります。
マンションの売却時にかかる可能性のある税金は、全部6種類です。以下のように、それぞれの金額と納税するタイミングは異なります。
金額 | 納税するタイミング | |
---|---|---|
印紙税 | 5,000〜30,000円が一般的 | 売買契約締結時 |
登録免許税 | 不動産1つに1,000円 ※司法書士の報酬と合わると10,000〜40,000円 | 抵当権抹消登記の依頼時 |
消費税 | 仲介手数料(物件価格×3%+6万円)の10% | 売買契約締結時 |
所得税 | 売却益の15%もしくは30% | 売却した翌年の確定申告時 |
住民税 | 売却益の×5%もしくは9% | 売却した翌年の6月 ※住民税を給与から特別徴収する場合は6月から天引き開始 |
復興特別所得税 | 売却益の×0.315%もしくは0.63% | 売却した翌年の確定申告時 |
収入税
印紙税とは、不動産の売買契約書に収入印紙を必要金額分だけ添付して納める税金です。支払いが必要な印紙税額は、契約書に記された金額によって決まります。 また、令和2年(2020年)年4月1日〜令和4年(2022年)3月31日の間に作成された不動産売買の契約書に添付する収入印紙の金額は、以下のように軽減税率が適用されます。契約書記載の契約金額 | 本来の税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
1万円以下 | 非課税 | 非課税 |
1万円から10万円 | 200円 | 200円(軽減税率適用外) |
10万円超・50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超・100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超・500万円 | 2,000円 | 1,000円 |
500万超・1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超・5,000万以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超・1億円以下 | 60,000円 | 30,000万 |
1億円超・5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超・10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超・50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超えるもの | 60万円 | 48万円 |
登録免許税
マンション売却時に支払う登録免許税とは、抵当権抹消登記をするために支払いが必要な税金です。 住宅ローンでマンションを購入した場合は、そのマンションには抵当権が設定されています。マンションの売却時には、ローンを完済した上で抵当権の抹消登記をしなければなりません。 抵当権とは、住宅ローンの返済を滞納された場合に、金融機関が担保として登録しているマンションを競売にかけて、売却金を優先して債務の弁済に充てられる権利です。 抵当権が残っていても、マンションは売却できます。しかし前の所有者が滞納した場合に、取り上げられるかもしれない物件を、誰も購入したいとは思いません。そのためマンションを売却するためには、住宅ローンを完済して抵当権を抹消する必要があるのです。 抵当権抹消登記時に支払う登録免許税の金額は、不動産1つにつき1,000円です。仮に土地1つと建物1つが登記されていた場合、合計で2,000円の登録免許税を支払います。 抵当権抹消登記には専門的な知識が必要となるため、司法書士に報酬を支払って依頼するのが一般的です。司法書士への報酬を合わせると、抵当権抹消に必要な登記費用は、10,000〜40,000円程度となります。 なお登録免許税は、売却時に住宅ローンが完済されていれば支払う必要はありません。消費税
消費税は、マンションの売却時に不動産会社に支払う仲介手数料にかかる税金です。消費税の税率は、2019年(令和元年)10月からは10%に引き上げられました。 仲介手数料は、多くの不動産会社で法定上限額である「物件価格×3%+6万円(税抜)」に設定されています。仮に物件の売却価格が2,000万円である場合、仲介手数料は税抜で66万円であるため、消費税の金額は66,000円となります。 なお、個人間売買のような不動産会社を通さない売買契約では、仲介手数料を支払う必要がないため消費税も発生しません。- マンションの売却時には売却価格に応じた印紙税の支払いが必要
- 住宅ローンを一括返済するためには登録免許税を支払って抵当権を抹消する必要がある
- 仲介手数料には消費税がかかるのは仲介手数料のみ
マンションの売却益(譲渡所得)にかかる税金の種類と計算方法

不動産の売却時に利益(譲渡所得)が発生した場合、所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。マンションの売却時に損失が発生した場合は、課税されません。 では、譲渡所得に対する税金はどのように計算されるのでしょうか?計算方法を、順番に解説します。
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譲渡所得にかかる税金の計算方法
まず譲渡所得を、以下の方法で計算します。 譲渡所得の計算方法 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用
内容 | |
---|---|
譲渡収入金額 | マンションの売却価格+固定資産税・都市計画税の清算金 |
譲渡費用 | マンション売却の諸費用 (仲介手数料・印紙税・登録免許税) |
取得費用 | マンションの購入代金から減価償却累計費を差し引いた金額 +購入時の仲介手数料+設備費 |
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マンションの購入代金は、減価償却累計費を差し引いた金額で考えます。減価償却費とは、建物が経年劣化によって低下したと考えられる価値に相当する金額です。 減価償却費について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご確認ください。
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マンション購入時に支払った金銭が、取得費用に該当するかどうか分からない場合は、売却時に不動産会社や税理士などの専門家に確認しましょう。 もし取得費用が不明な場合は、次の計算式(概算法)で求めることも可能です。
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譲渡所得にかかる税率
譲渡所得額が計算できたら、以下の計算式で譲渡所得にかかる税金を計算します。 譲渡所得税 = 譲渡所得金額 × 税率
税率は、以下のようにマンションを所有期間が5年以下か5年超かで異なります。所有期間 | 区分 | 税率 |
---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.630% (所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%) |
5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% (所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) |
- 6,000万円以下の金額:14.21%(所得税10%+住民税4%+特別復興所得税0.21%)
- 6,000万円超の金額:20.315%(所得税15%+住民税5%+特別復興所得税0.315%)
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- 譲渡所得が発生する場合は所得税や住民税、復興特別所得税を納める必要がある
- 税率はマンションの所有年数によって変わる
マンション売却時の譲渡所得にかかる税金に対する特例

マンションの売却時に譲渡所得が発生しても、特例を受けることで税負担を軽減できたり税金を支払うタイミングを繰り越したりできます。
3,000万円の特別控除の特例
居住用の物件であり、ご自身が実際に住んでいたマンションであれば、特例の適用により譲渡所得から3,000万円を控除できます。つまりマイホームを売却する場合、特例を受けると譲渡所得が3,000万円を超えない限り所得税や住民税、復興特別所得税は課税されません。 3,000万円の特別控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。 3,000万円の特別控除を受けるための要件
- 実際に売り手が居住している場合。
- 転居したのちに売却となった場合は、転居3年後の12月31日までは適用。
- 災害などにより家屋がなくなった場合は、その日から3年後の12月31日までに敷地だけを売却した場合。
- 転居後に家屋を取り壊した場合は、転居3年後の12月31日まで、あるいは取壊し後1年以内どちらか早い日付までに売却した場合。
- 売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 売手と買手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。
3,000万円の特別控除を受けられない場合
ただし事業としてマンションを売却するときや、個人が投資用マンションを売却するときは、特例が適用されない点に注意しましょう。 また3,000万円の特別控除を受けるためには、確定申告が必要です。必要書類をそろえて、忘れずに必ず申告しましょう。- この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、もしくは一時的な目的で入居したと認められる場合
- 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
- 投資用のマンション
特定の居住用財産の買換えの特例
「特定の居住用財産の買換えの特例」を受けられると、マンションの譲渡所得にかかる税金の支払いを、買い替えたマイホームを売却するときまで繰り越せます。 例えば、2,000万円で購入したマンションAを3,000万円で売却し、4,000万円のマンションBを購入、その10年後にマンションBを5,000万円で売却したとしましょう。 マンションAとマンションBをそれぞれ売却したタイミングで、譲渡所得が1,000万円ずつ発生します。買換えの特例を利用すると、マンションAの売却時に課税はされず、マンションBの売却時に、2,000万円の譲渡所得に対してまとめて課税されるのです。※経費などは考えないものとする。 買換えの特例を受けるためには、「居住用として10年以上利用していた」「身内への売却ではない」などの所定の条件を満たしたうえで、確定申告が必要です。 また買換えの特例と、3,000万円の特別控除もしくは長期譲渡所得の軽減税率は、併用できない点に注意しましょう。※3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率は併用可能あわせて読みたい
マンション売却時にかかる税金を確定申告で節税できる5つの特例を紹介!
- マイホームを売却する場合、特例により3,000万円までの譲渡所得が非課税となる
- 買い替え特例を受けることで譲渡所得に対する課税が買い替え先のマイホーム売却時まで繰り越される
マンション売却時の税金シミュレーション

ここで、マンションを売却した場合に支払うべき税金をシミュレーションします。条件は、以下の通りです。
- 購入時の価格:6,000万
- 売却時の価格:1,000万
- 所有期間:6年
- 譲渡費用:400万円
- 購入時の諸費用:300万円
減価償却費=購入代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 =6,000万 × 0.9 × 0.015 × 6 =486万円
よって取得費用は、以下の通りです。 取得費用=購入時の価格-減価償却費用-購入時の諸費用 =6,000万円-486万円-300万円 =5,214万円
よって特別控除を適用する前の譲渡所得額を計算すると、以下の結果となりました。 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用 = 7,000万円 – 400万円 – 5,214万円 – 0円 = 1,386万円
仮にマイホームを売却する場合は、3000万円の特別控除を受けると、譲渡所得の金額は0円となり所得税や住民税、復興特別所得税は課税されません。 買換えの特例を利用する場合、1,386万円の譲渡所得に対する課税は、住み替えたマイホームを売却するときに繰り越されます。 もし投資マンションを売却するときのように3000万円の特別控除を受けない場合、売却した物件の所有期間は6年ですので、税額は長期譲渡所得に対する税率を用いて計算します。- 所得税:2,386万円×15%=2,079,000円
- 住民税:2,386万円×5%=693,000円
- 復興特別所得税:2,386万円×0.315%=43,659円
- 納税額合計:2,079,000円+693,000円+43,659円=2,815,659円
- 譲渡所得が発生する場合、3,000万円の特別控除受けるかどうかによって税負担は大きく変わる
3,000万円の特別控除や買換えの特例と住宅ローン控除は併用できない

- 3,000万円の特別控除や買換えの特例、長期譲渡所得の軽減税率を受けると住宅ローン控除が一定期間受けられなく成る
マンションを売却して損したときは確定申告で税負担を軽減可能

マンション売却時に税負担を軽減できるのは、売却益を得たときだけではありません。売却代金が購入代金よりも安く、損失(譲渡損失)が発生した場合、以下の特例によって税金の負担を軽減できる場合があります。
- マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
例えば、譲渡損失額が600万円で、売却した年の他の所得が800万円だったとしましょう。 所得税や住民税は、所得に税率をかけて計算されます。損益通算によって所得が800万円から200万円に減額されることで、納めるべき所得税や住民税の金額が下がるのです。 もし売却した年の所得よりも譲渡損失の方が多く相殺しきれなかった場合、余った控除額を最大3年間にわたって繰り越すことも可能です。 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けるためには、売却したマンションの所有期間が5年以上でなければなりません。 またマイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算と繰越控除特例では、買い替えた不動産が以下の条件を満たしている必要があります。
- 延床面積が50平方メートル以上である
- 売却した年を挟んで3年の間に購入(買換え)した
- 購入した年の年末の時点で、ローンが10年以上残っている
- 購入した翌年の年末までに入居する見込みがある
- 譲渡損失が発生した場合、譲渡損失の損益通算と繰越控除特例によって所得税や住民税の負担を軽減できる場合がある
マンション売却時に支払う税金まとめ

マンションを売却した時にかかる税金
- マンションの売却には印紙税や登録免許税、消費税などがかかる
- マンションの売却で譲渡所得が発生した場合は所得税や住民税、復興特別所得税が課税され、税率はマンションを保有していた期間によって異なる
- 譲渡所得が発生した場合「3,000万円の特別控除」によって税負担を軽減できる。また「買換えの特例」によって課税を先送りすることも可能
- 3,000万円の特別控除や買換えの特例、長期譲渡所得の軽減税率を適用すると、一定期間住宅ローン控除を受けられなくなる
- 譲渡損失が発生した場合、確定申告で他の所得と損益通算して税負担を軽減できる場合がある
マンション売却時により多くのお金を手元に残すためには、税金の知識が不可欠です。「こんなに税金がかかるとは思わなかった」「特例があるなんて知らなかった」という事態を防ぐためには、税理士や税金の知識が豊富な不動産会社の力を借りましょう。 何よりマンション売却において重要なことは、力量のある不動産会社に依頼して少しでも高い金額で売却することです。よって、マンション売却を成功させるためには不動産会社選びが非常に重要といえます。 マンションナビの無料一括査定サービスでは、最大6社の査定結果を短時間で比較可能です。 マンションの査定に根拠があり、売却までの道筋を明確に説明してくれる不動産会社ほど信頼できます。一括査定サービスを活用して、頼れる不動産会社を探してみてはいかがでしょうか。
FP監修者情報:品木彰
■氏名:品木彰
■保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
■プロフィール:大手生命保険会社にて7年半勤務し、チームリーダーや管理職候補として個人営業、法人営業の両方を経験。その後人材会社で転職したのちに副業としてwebライターを始める。お金に関する正しい知識をたくさんの人々に知って欲しいとの思いから、2019年1月よりwebライターとして独立。これまで保険、不動産、税金、音楽など幅広いジャンルの記事を、多数のメディアで執筆・監修している。