マンションを売却する際に税金がかかることはご存知でしょうか。また税金を安くすために節税対策をしたいという人も多いのではないでしょうか。マンションを売却する際に節税できるのは譲渡所得税です。マンションを売却する際に、かかる税金に対して「なんて高額なんだ」と嘆くだけでなく、損しないためにも自分がどのようなものを支払っているのかを把握しておくことが大切です。マンションの売却は人生で何度もするようなものでもないので、知っておくべきポイントをいくつかご紹介していきます。
目次
譲渡所得税とは

マンションを売却する際に発生する利益。この利益は自分の所有しているものの所有権を他人に譲渡して得ている利益であるため、「譲渡所得」といいます。
ここで注意しなければならないのは「譲渡所得」には税金がかかるということです。
その税金のことを一般的には譲渡所得税と呼んでいますが、その実態は所得税と住民税です。譲渡所得税の内訳としては全体の15%が所得税で、5%が住民税と覚えておくとよいでしょう。
所得税と住民税の基本的なおさらいをしておくと、所得税とは個人の一年間の所得に対してかかってくる税金のことです。
そして住民税は地域の教育などのための資金として支払わなければいけない税金で、これは住んでいる地域と所得によって金額が変動します。そのため、譲渡所得税(所得税と住民税)はいくら分の譲渡所得が得られるのかで金額が変わってきます。
ただし、マンションの売却で得られる譲渡所得については「分離課税」と呼ばれるもので、他の所得税とは合計せずに計算して課税する税金です。
マンションを売却する際にかかる税金は、譲渡所得税以外にも「印紙税」や「登録免許税」などが存在します。ただし、節税対策で重要になるのはここで紹介する「譲渡所得税」だけだということを押さえておきましょう。
譲渡所得税の計算方法

せっかくマンションを高額で売却できても、それにかかってくる譲渡所得税が高額では悲しいですよね。
しかし、譲渡所得税の納税は免れることのできないものです。
そこで、実際に支払いのタイミングになってから「こんなに高額納税しないといけないのか」となってしまわないよう、事前にどれくらいの金額の納税が必要になるのかを把握できるようにしておきましょう。
また、譲渡所得税はどれだけの期間その対象マンションを所有していたかによっても金額が変わってくるので、どのタイミングでの売却がより損をせずに売れるのかも知っておくべきポイントです。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得税を計算する際には、そもそも譲渡所得がどの所得を指すのかということを理解しておく必要があります。譲渡所得を割り出すには、マンションを売却した際の金額である「収入金額」、過去にそのマンションを購入した際にかかった費用である「所得費」、そのマンションを売却した際にかかった費用である「譲渡費用」の3つの概念を理解することが必要です。
何故なら、譲渡所得税の金額は下記のように算出されるからです。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得税 = 譲渡所得金額 × 税率
譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用 – 特別控除額
譲渡所得税は、譲渡所得金額に税率をかけて求めます。譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用 – 特別控除額
税率について後に紹介していきますが、ここで、譲渡所得金額について説明します。
譲渡所得金額とは、譲渡収入金額(売ったときの値段)から売ったときにかかる費用(譲渡費用)とマンションを買った時にかかった費用(取得費用)を引いて、計算されます。
なぜかというと、譲渡収入金額(売ったときの値段)に税率がかかると、マンションを売ったときに多額の税金を支払うことになってしまうため、マンションを売却した時にかかった費用や、購入した時にかかった費用も考慮して、税金を計算することで、税金の負担を軽くするためです。
つまり、マンションの売却時に売り上がった金額が譲渡所得ではありませんので、注意が必要です。
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さらに譲渡所得税は、上記で説明した譲渡所得金額に税率をかけることで求められます。
譲渡所得金額にかかる税金は、マンションの売却タイミングで変わりますので、詳しく説明していきます。
譲渡所得税の計算はマンションの売却のタイミングで変わる
譲渡所得税の割り出し方は、譲渡する不動産を所有していた期間によっても異なります。そのため、自分がどれだけの期間その不動産を所有していたのかを把握する必要があります。
大きく分けて、所有していた期間が5年以下なのか、5年超なのかに分かれます。
所有していた期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年超であれば「長期譲渡所得」となり、かかってくる税率が大幅に変わるので、不動産の売却のタイミングの見極めは重要です。
5年超の定め方としてですが、所有期間は売却した年の1月1日からカウントされます。そのため、購入して5年目の不動産は「短期譲渡所得」のカウントとなってしまうため、購入して6年目からが「長期譲渡所得」の扱いになるので注意しましょう。
譲渡所得は5年以上保有すると安くなる
前述の通り、譲渡所得税の税率は「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」で大きく異なります。「短期譲渡所得」であれば譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)が譲渡所得税の計算方法となり、「長期譲渡所得」であれば譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が計算方法となります。
今すぐに譲渡しなければならないという条件がない限り、「長期譲渡所得」として売却した方が税率が全体的に半分近くにまで下がるため損を低く抑えられます。
税の種類 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得税(5年以下) | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得税(5年以上) | 20% | 5% | 25% |
譲渡所得税を支払うタイミング

「譲渡所得税」といっても、中身は「所得税」と「住民税」。そのため、これらの2つの税金を支払うタイミングは別々なので注意が必要です。
譲渡所得税(所得税)を支払うタイミング
まず所得税ですが、所得税はマンションを売却した翌年の2月から3月の間に確定申告をして納税します。銀行口座から直接振り込みを行う「振替納税」という手段を選ぶ場合には4月中旬に自動引き落としがされるので、自分で納税するよりは支払い期間に猶予があります。
譲渡所得税(住民税)を支払うタイミング
注意が必要なのは、所得税のみ支払って譲渡所得税を全額支払ったつもりでいると、売却した後に、住民税の支払いがあることに気付くということです。住民税は売却した翌年の6月(確定申告から3〜4ヶ月後)には支払いが必要になります。6月、8月、10月、1月の4回に分けての納税となります。
もちろん、一括もできますし、手続きさえすれば給料からの天引きも可能です。
譲渡所得税を安くするために知っておくべきポイント

マンションなどの不動産を売却する際に、減価償却という考え方が存在します。
減価償却とは、マンションなどの固定資産の中で時間の経過とともに価値の下がるものに対してかかってくるもので、資産を使用期間内で分割して計上します。
そのため、時間が経てば経つほどその価値は下がるため、マンション却時の納税金額を抑えることができます。
減価償却を理解するためには3つのポイントを理解しておく必要があります。
「所得原価」、「耐用年数」、「残存価格」です。
「所得価格」はその資産を所得した際にあった資産の価値のことです。
「耐用年数」は資産がどれほどの年数使用できるのかを定めたもので、それぞれの資産が何年ほど保つのかについては法律で定められています。
そして最後に「残存価値」とは、耐用年数が過ぎた後の資産の価値であり、噛み砕いた言い方をすると最終処分価格のようなもので、所得価格の10%と定められています。
譲渡所得税の計算まとめ

- マンションを売却した時には「譲渡所得税」がかかる。
- 譲渡所得税とは「所得税」と「住民税」の2つのこと。
- マンション売却において節税できる税金である。
- 特に5年以上マンションを所有していると節税をすることができる。
- 所得税と住民税とでは支払うタイミングが違うので注意が必要。
なるべく損の無いように不動産を売却するためにも、譲渡所得についての仕組みや、節税の方法は理解しておきたいところですよね。
減価償却の仕組みを合わせて理解しておけば、納税金額も大幅に節税できるのでうまく活用しながらマンションの売却をしましょう。